アロルド・ロペス・ヌッサ来日公演

キューバの新鋭ピアニスト、アロルド・ロペス・ヌッサの来日公演が9月12〜14日まで丸の内コットンクラブで行われた。

3年連続となるコットンクラブでの公演、昨年は「東京JAZZ」にも出演し、日本でも急速に知名度を上げつつあるアロルド。キューバ本国では2000年代初頭から、欧州のジャズシーンでもその数年後にほ注目される存在となっていいたので、日本での評価がようやく追いついてきた状況だ。

 

2005年、モントルー・ジャズフエスティバルのソロピアノ部門で優勝したアロルドは、驚異的なバカテク・ピアニストがひしめくキューバ音楽界の中でも、最も優れた技巧を持つ奏者と言っていい。ところが、ここ数年の来日公演ではこれ見よがしのテクニックは控え、トリオでのバンドサウンドの完成と、観客に心地よい緊張とリラックスさを提供するステージを披露している。

今回のステージも同様で、テクニックで観客を驚嘆させるのは、実弟のドラマー、ルイ・ロペスとセネガル出身のベーシスト、アルーン・ウェイドに任せ、耳に心地よいピアニズムを楽しげに奏でるアロルド。その姿にキューバンジャズの演奏家の成熟を実感した。

 

80〜90年代、巨匠ピアニスト、チューチョ・バルデスやゴンサロ・ルバルカバがキューバの社会主義体制の厚い壁を越えて「西側」のジャズシーンに紹介された時、彼らはアスリートもかくや、という人知を超えたピアノテクニックが全編を支配するコンサートで注目された。と同時に、彼らのステージがキューバのジャズ全般のイメージとなって世界に流布し、強い拒絶反応を示すジャズファンが現れたりもした。

そんな注目〜混迷から20数年、アロルドのような新世代ミュージシャンは世界に出てゆくことの気負いもなく、表現したいことと、自らの技巧と、観客の求めるものとを、絶妙な均衡で提示して見せた。

 

上の写真は兄弟によるピアノ連弾の場面。ドラマーのルイがあそこまで上手くピアノを弾けることに、客席からは驚きの歓声が上がったが、キューバ人ドラマーはかなりの確率でピアノが弾ける。あのゴンサロ・ルバルカバも最初に習ったのは打楽器で、ハバナ芸大の打楽器科卒が彼の最終学歴だ。つまり、キューバではピアノは打楽器なのである。

 

来年に向け、日本人チームによるアルバム発売のプロジェクトも進んでいるアロルド。今後の展開に期待したい。